市庁舎にチェゲバラが描かれているところが、この村を物語ってますね。
[amazonjs asin=”477831428X” locale=”JP” title=”理想の村マリナレダ (atプラス叢書08)”]スペインに実在する民主主義のユートピアと呼ばれる村|世界の裏側ニュース
理想の村〜マリナレーダ
住民が公爵の農場を占拠したり、村長がカルフールを襲撃したりと、記事だけを読むととてもラジカル。だけど、それは私利私欲ではなく、利己的すぎる社会に対するプロテストだ。という一貫した信念がとても考えさせられる話。
30歳で当選し、36年間にわたってこの村を率いている村長のフアン・マヌエル・サンチェス・ゴルディージョさん。
この村長は本気なんでしょうね。目力が半端ない。
ただ、資本家に対して抗議をするだけでなく、協同組合をつくり、占拠した農場で生産を行い、村長以下2700人の村人の多くを最低賃金の2倍で一律に雇用している。
誰もが月額15ユーロの住宅ローンで家を自律的に作る仕組み(中央政府等により、一軒あたり約250万円の建築資材費を負担させていたるところも興味深い)を提供し、物件を投機対象にしないために、売買を禁止したりと街づくりの具体的な施策も面白い。
とはいえ、住宅と仕事が安定的に提供されていることで、学業を放棄してしまう人が増えているところが課題。というのも別の意味で興味深い。
そうした課題は山積させつつも、村長の強烈なリーダーシップやビジョンがこの街を引っ張っているのだと思う。機会あれば、ぜひこの目で体験しに行きたい。
アンダルシアに浮かぶコミュニズムの島 | Ramon Book Project
仮想敵とビジョンのバランス
コミュニティをつくるには、課題意識と当事者意識が必要。わかりやすい仮想敵があると、コミュニティの結束は高くなるけれど、それだけでは持続的なコミュニティにはなりにくい。
一方で、ソーシャルメディアのように、リーダーシップやマネジメントのない、オープンに誰もが出入り自由でフラットな世界にもヒントはあるけど、そうした感覚を現実世界に落とすにはまだまだ工夫が必要。
対資本主義社会というカウンターを入り口にしつつも、そうしたルサンチマンや怒りだけでは対立的で閉じたコミュニティをつくってしまう。
緩やかに中央政府や国家という現実的な折り合いをつけながら、個性的な自治区を自律的に運営していきつつ、人間のあるべき豊かさやビジョンを損なうことなく信頼関係やつながりを維持していくユートピアは実現可能なのだろうか? ヒッピー村ではなく、自治区であること。この村長が30年近くもそのバランスを取ってきたのはとても興味深い。
この村のような、コミュニティがたくさん増え、そしてお互いの試行錯誤を共有しつつ、持続的に生き残る相互交流可能な開かれた共同体のあり方を模索する時代に来ていると思う。
自分自身もそうした村づくりを目指し日々試行錯誤しているけど、いま直面している小さなコミュニティですら、いろいろな葛藤やトラブルばかりですごく大変。理想だけでは上手くいかない世界だけど、政治や国家が不信感に満ちた時代。コミュニティとして持続していく新しい共同体作りは必然な部分もあると思う。
これからの時代は、どこに住むか?ではなく、どんなコミュニティと生活するか?が重要。
そして、市民と行政がお互いを尊重しあい、当事者として未来を語り合い、現実の問題と対処していけるような、そんなコミュニティ。
こういう熱い気持ちにさせられる場所。日本にもきっとたくさんあるはず。
「なければ作る」それくらいの気持ちで新たな社会への持続可能性を模索する生き方をこれからも続けていきたい!そう思わせる、マリナレーダ。
課題先進国の日本だからこそ、日本的シェアリングエコノミーの事例やコミュニティによる解決方法は世界にも輸出できる産業にもなり得るはず。
世界のお手本になるそんな地域がもっと増えるといいなぁ。
類書でこの本もおすすめ!