サントリー美術館では、「巨匠ピカソ 魂のポートレート」と題して、自画像とそのほかの油彩画を中心に展示。
今日みた作品で、もっとも心動かされたのはピカソ展の最後を飾る絵画「若い画家」。
作品の前で立ち尽くして鑑賞してました。
青の時代に描いた老成した自画像から70年。
死を前にして自ら若い自画像を最後に描いたピカソの心に想いを馳せながら、二日間共に追体験してきた、半生がここで終わってしまうのかと思うと、なんとも切ない気分になり、ここでも離れがたさと、後ろ髪を引かれる思いで、人の流れを遮らない場所でずっと眺めていました。
たぶん、この絵に心動かされた人、多いんじゃないでしょうか?
若い画家
90歳とまではいかなくとも、最後の自画像を描ける人は、本当の画家なのだと思います。
色々なものを断ち切らないときっと描けない気がするのですが、ピカソはきわめて少ないタッチで何とも言えない深い目をした笑顔の若い画家を描きました。
何十万という作品を作り上げてきたピカソの最後の自画像。この絵に詰まった「境地」のようなものの前に、足下にもたどり着けない気持ちになり、ただ、ただ何も言えず見入ってしまいます。
ピカソの生涯がどんなものだったのか、本当のところ、やはり何もわからないままでしたが、でも逆にどんなに身近な人であっても、ここまでその人の半生や生き方に触れられる機会がある人もいないと思います。
もうしばらく会うこともできないかと思うと、ピカソのミューズ達のように、彼の魅力に翻弄された人の気持ちの片鱗を少しでも共有できた気がして、少し寂しさを感じつつもなんとも充実した時間でした。
いや、片鱗ぐらいにしておかないと、強すぎてぽっかり穴があいてしまうかもしれません。それくらいエネルギーと魅力に満ちた人。ピカソ。なんだか不思議な力をもらった二日間。
ガイドの最後にこんな感じの一節がありました。
「絵画は自ら望むようにピカソに絵を描かせ、そして絵画はピカソを画家にした。」
絵画や音楽は、描いたり演奏したりするのではなくて、描かされ、演奏させられるものなのかもしれませんね。
絵筆によって描かれた味わい深い人生の絵巻を駆け足でみてきたような、そんな展示会でした。