君の頭は営業中かね?

KC3A0148 しばらくオフィスをもたないノマディックワーカーな日々。

景色のよい窓際にノートパソコンをおいて、そこをオフィスに。

締め切り間近な原稿を書こうと思いつつ、ふぅ?っとため息ついて深くいすに沈み込むと、しばらく思考停止。

年始の記憶も遠い過去に思えるほど、今週も打ち合わせずくめな一週間だった。

自分の仕事は空いている時間にやればいいと思って見積もるとたいてい勘定にあわない。

3時間くらいで片付くだろう・・と思っている仕事は間違いなく、その3倍はかかる。

大人なのにちゃんとした数学ができていない。

なんて、思いつつ、
放浪の天才数学者エルデシュ ポール ホフマン
を読む。

あっという間に読めそうな分厚い本なんだけど、味わいながらゆっくり読みたい素敵な本なので、読了前にちょっとレビュー。

ちょうど今年はいろいろな人と「対話」してコラボレーション的な仕事を楽しもうと思っていたのだけど、もうそんなレベルじゃない、もっともっと突き抜けた「対話」的な生き方を貫いた一人の天才数学者の話。

このエルデシュの生き様はその意味ではもっともあこがれて、かつもっとも遠い存在な人。それが映画ではなくて実在していたからすごい。

どこにも所属せず、定住地を持たず、古びたブリーフケースには替えの下着とノートのみ。世界中を放浪しながら、1日十九時間、数学の問題を解き続けたという伝説の数学者、ポール・エルディシュ。四大陸を飛び回り、ある日突然、戸口に現れて言う。

「君の頭は営業中かね?」

83才で死ぬまでに、発表した論文は1500、有史以来どんな数学者よりもたくさんの問題を解き、しかもそのどれもが重要なものであったという、(書籍より)

こうして、世界中の数学者の家に泊まりこみ、対話を繰り返し、共著で論文を作成したという。一見迷惑な話だけど、その愛すべきキャラクターとその天才的な頭脳に誰もが魅了されたという話。

身なりも浮浪者のような格好をしていて、数学以外のことにはまったく無頓着な世捨て人のような生き方も徹底していて、世界中から振り込まれる講演料も必要最低限の生活費をのぞいてはたいていを寄付してしまう。

この本はもちろん彼の生き様を追ったものでもあるけど、同時に「数学」という神の作り出す問題の深遠さを改めて思い返させてくれるもの。

そのあたりは、こんな練り方では文章化できるようなテーマではないけれど、ひとりの人の生き様を通じて、僕らが今生きている生活や社会の根底にながれる、数学というネットワークをマンホールのふたをあけて垣間見ている気分になる。

このインターネットだって、数学がなければ存在しない。そしてその数式の美しさの上になりたっているもののようにも思える。

音楽や美術に答えがないように、本当に学ぶべきことには、答えがないほうがいいのかもしれない。それは学というよりは道なのかな。

・・・おっと、こうして見積もりがあわなくなっていく。

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