年始に初歌舞伎してから、その余韻が忘れられずまた行ってきました。
完全に歌舞伎素人なのですが、何の先入観も持たずに観てもこれだけ感動できるのだから、やはり芸能はすばらしい!
毎月観に行きたいほど。感動を言葉にするのがもどかしいくらいです。
今回も時間が経つのも忘れ、現世という今から幻世の今に身を委ね素晴らしい時間を堪能しました。
一、爪王(つめおう)
暗転から始まり雪深い鷹匠の家屋から始まるのですが、連中の淡い藤色の羽織りと鷹の繊細なこしらえとすべてが冬の夜景色と重なりあっていて、息をのむ光景でした。
この歌舞伎の一番最初に出てくる絵画のような舞台配色は、それだけで額に入れて絵にしたいほどですね。
その絵画が優美に動き踊り、喜怒哀楽を奏でるのだから、こんな究極の和芸術ってないなぁと目が釘付けでです。
吹雪(七之助)となずけられた鷹の健気さと優美さと最後の神々しさは、もう人の踊りには見えず、鷹の舞そのものでした。
歌舞伎免疫がないだけに、なんでも感動してしまいます。
二、俊寛(しゅんかん)
前知識もなにもなく見入ったのですが、これも涙なくてはみれない作品でした。
俊寛(勘三郎)の一人取り残され船を見送るシーンは本当に切ない。仏になり、身を犠牲にし島にのこり、そして、船が出たあとふと我(人間)に戻り、孤独さと恐怖と悲痛さを全身に受け、最後、諦観と達観の仏の表情に戻る一連の流れは、忘れられない見せ場でした。
まさに喜怒哀楽が凝縮された素晴らしい一幕ですね。
四、ぢいさんばあさん
口上のあとの最後の演目。心温まる夫婦愛が描かれた作品なのですが、三七年間離れ離れになった、仲睦まじい夫婦が年老いて再会するところ。玉三郎の踊りが見たかったのですが、それはまたのちの楽しみに取っておいて、二人のわかかりしころと老齢したふたりの身のこなしを見事に演じ分け、風貌は変われど二人の変わらぬ本心を表現していたあたり、これも、じんわり涙が出る作品でした。
前回は新年にふさわしく、楽しい!元気一杯という演目だったのですが、今回はじんわりくる情ものばかりで、たった二回目ですが、どんどんのめりこんでいく自分がいます。
日本っていいなぁ。舞台っていいなぁ。芸術っていいなぁ。
色々いいなぁと感嘆つきない歌舞伎でした。