マットデイモン演じる、記憶喪失の暗殺者ジェイソンボーンのサスペンスアクションシリーズ。
シリーズ三部作。(さらに、続編もあるらしい)
シリーズ全編まったくダレることもなく、正直言って、なんの不安げもなく面白く、誰にも勧められる映画。
三作目「ボーンアルティメイタム」の監督の副音声解説を聞いて驚いたのが、はじめて三作目から見始めた人にもわかるように、シナリオと編集で苦心したとのこと。それも、シリーズを見ている人にとって蛇足にならない程度に最小限に編集されているのがすごい。
たしかに、思い返せばそうなってる。しかも作目ごとの連結が見事。
最近よくある、「続編に続く」といった気持ち悪さもなし。少し謎を残しながらもすべて爽快感すら残すエンディングできっちり閉じている。
連結もトリッキーなシーケンスで一件わからない。
筋はCIAが作り出した暗殺者育成プログラムで生み出され記憶を失った主人公が、自分のアイデンティティを追い求めて行くというもの。基本シンプル。
見所は、自身に苦悩しながらも、スイッチがはいると極めて冷静沈着な集中力と観察力を伴うボーンのアクション。あんな人になりたい(笑)全男子の憧れが集積されたようなキャラクター設定。
苦悩という設定がなければ、きっとアメリカンなただのシュワちゃん風味な痛快アクション映画で終わっていたに違いない。
その苦悩がストーリーにリンクしているので、違和感もないし。
全世界盗聴システムとソーシャルメディア
あと、CIAのシーンで頻繁に出てくる、全世界盗聴システム「エシュロン」がすごい。すべての携帯電話の音声認識システムで、特定の言葉を発した人の個人情報と居場所が特定されたりする。これって、スカイプやGoogle, Facebookフォンなんて出てきたら、全通話履歴をテキスト検索できたり、通話料が無料の代わりに個人情報バーターで提供される社会がくるかもしれない。
Twitterの次は、こうした音声通話をリアルタイム共有化した社会かもしれない。
ガラケーの次はセキュアフォンだったり。基本料1000円増しで盗聴されません。とか。GPSありませんとか。
映画はあくまでフィクションだからこそ、リアルな社会でみえずらいものを、特徴的にあぶりだしてくれる。
ボーンのように強い人間ならばいいけど、人は情報やアイデンティティが制圧されたら、どこにも身動きできない案外無力な存在なのかもしれない。