沖縄に来る前に、あわてて鞄に放り込んできた本。やはり面白い。基本的に対談本は苦手なのに、この本はものすごくテンポがよく、思考がとまることなく読むことができる。
二人の人柄を感じながら、思考に肌で触れていられるような心地よさ。こんな対談本だったらもっと読みたくなる。
9条を軸にしながら、日本人という存在や死生観。表現することや物事の捉え方視点の持ち方など、まさに読んでみたいテーマが盛り込まれていて楽しく読めた。
特に、爆笑問題の太田さんの言葉の切れ味や表現力がいつもうらやましく思えて、どうしてそんな風に語ることができるのか、話のテーマや中身よりも芸人や表現者としての彼の考えや葛藤にも触れることができたのがとてもよかった。
「武士道と芸人の土壌は同じ」という章があって、言葉も剣も人を傷つける危険があって、でもそれは同時に自分自身の死に対する向き合い方や覚悟を試すことである。という筋。
やはり、表現することで人を傷つけることも、自分が傷つくことも怖がっている今の自分を思うと、表現者としては覚悟が低すぎる。
対象を斬りたいと思っていても、へたくそな言葉だと、切り口がつぶれて余計痛い。斬られたのがわからないほど芸術的に斬れる人たちの文章を読んでいると特に思う。
ただ、自身をも傷つけながらも果敢に挑戦している彼の姿勢を見ているだけで、何よりもの勇気に変わる気がした。それは中沢新一さんのスタンスもきっと同じ。
「何もせずに恐れるだけでは、何も変わらない。」 まず、読み終えた感想は九条についてというよりも、表現者のスタンスとしてのあり方について感じることが多かったのでメモ。
元々テーマが難しいだけに、読み進めていると論理の整合性ばかりに気を取られがちだけど、英語を話すときに文法に気をとられすぎると肝心な内容が伝わらないのに似ていて、細かいことは気にせず一気に読むと、勢いもあって楽しく読めます。
中沢新一さんの明晰さと太田さんの明快さ。そして二人のすばらしい言葉の乱取り稽古に立ち会ったような新鮮な感覚。
個人的にはきっとまた読み返したくなる本。おすすめ。