ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

映画『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』予告編【HD】

911の同時多発テロで、大切な父(トム・ハンクス)を亡くした少年オスカー(トーマス・ホーン)。ある日、父の部屋に入ったオスカーは、見たことのない1本の鍵を見つける。その鍵に父からのメッセージが託されているかもしれないと考えたオスカーは、この広いニューヨークで鍵の謎を解くため旅に出る。

引用元:映画『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』 – シネマトゥデイ

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「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い。」正直映画タイトルにピンとこなくてスルーしていたんだけど、これがなかなか良い作品。

自閉症の主人公を社会がどのように受け入れていくのか? 彼の冒険を通じて揺れ動く人々を描いた作品。

子供を信じて見守る〜子育てのお手本

自閉症で街に出るのも不安だらけの少年が父の残したメッセージを頼りに、ニューヨークに住んでいるその名前の人物に片っ端から会いに行くというストーリー。

子供の短所・長所を理解して見守りながら、サポートしていく親の苦労や思いやりに最後は涙が止まりませんでした。

どんなものにもあきらめずに好奇心を絶やさないことを教え続けたお父さんと、それを影で見守りながら、きちんとフォローしていくお母さんの存在。24時間いつでも連絡を取り合えるおばあちゃんと、子供の冒険に寄り添って旅に出るおじいさん。

四種類の愛情に見守られて、そして見守る側も子供から大切なことを学び直していく様もじんわりと心に沁みてきます。

多様性を受け入れる社会とは?

一方、親子関係だけでなく、こうした子供を社会がどのように受け止めていくか?という視点でも興味をそそられました。

このブログも子供の入院先の病室で書いているのですが、本当に様々な疾患を抱えた子供たちがたくさんいて、ここではそれが普通なのですが、一歩社会に出ると、「普通」(のことが出来ない)でない子供たちは、スポイルされていくのだと思います。

でも、改めて「普通」ってなんなのか考えます。普通が良いというのは、大人が作り上げた効率的で管理しやすい社会の中でのあり方。

そして大人たち自らがその「普通」から外れないように生きていることが、世の中の閉塞感を生み出している気がします。

この映画で、相手の気持ちをうまく読み取れない少年に対して、多くの大人たちが寛容に見守るシーンがあるのですが(その理由も終盤にわかってビックリしますが)、今の日本社会でこの映画のようなことが起きたらどうなるんだろう?と考えさせられます。

まだまだ同調圧力の強い日本の社会において、「協調性」とは、「互いに助け合ったり協力しあうこと」でる反面、ときに<助け合う>ことの押し付けになってしまいがち。

本来の協調性は、お互いの違いを認め合って、<迷惑をかけあう>ことに寛容な社会に成り立つものだと思います。

多様性や個性を受け入れて人は成長する

視点が少し違いますが哲学者の内田節さんの言葉で

「おそらく私たちは、関係によってつくられていく時間存在を、自己の存在として確立していく方法を確立したとき、はじめて近代的な疎外を克服する方途を発見するのである。」
(内山節『時間についての十二章』岩波書店)

少し、この言葉だけだどわかりにくいですが、<時間>が誰にも均一に普遍的に与えられているものではなく、それぞれの持つ感覚であったり、その関係性に生まれる<主体的>なものであって、それを認めあえる社会になれば、もっと生きづらさは減るのではないか?という考察。

社会全体に同じ時間や時間感覚を持つことが(普通とされるのは)、管理社会には都合の良いものですが、時間の使い方や時間感覚にもそれぞれ個性<違い・多様性>があってよく、それによって生まれる問題は問題ではなく、むしろ他者との違いに気づき受け入れることは、自分を受け入れることへの気づきや成長なのではないか?と思います。

 

自閉症の主人公の行動や感覚は、社会性に欠落したものがあるあるかもしれませんが、常識は型にはまらない考えや、その葛藤も含めて、とても主体的で人間的です。

少年との出会いで何かに気づいて変わっていく(変わらない人も含めて)大人たちの姿も印象的でした。

こうした子供の行動に周りは戸惑いを覚えますが、むしろ、その常識にとらわれない<主体性>に大人社会は学ぶべきであって、教育においても大切なヒントだと思います。

<普通>を安易に良しとしてしまう罠にはまらないこと。

多様性を受け入れ、これまでの常識を壊し再構築していく、新しい社会のあり方。

最近の個人的な問題意識とリンクしていて、すごく良いタイミングで観れた映画でした。

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