なにが素敵かというと、絶壁にあって一番上にのぼるのはしご部分が本気で怖いところ。
「足をすべらせたらきっと死ぬ」 と思うからこそ、全神経を集中して一番上の部屋を目指す。その恐怖感とそれでもその先にある景色を眺めずに帰りたくないという欲求が戦う。むしろ自分に負けたくないという思い。
最後の階段を上りながら下を見下ろすと、受け皿となるデッキ部分がないので、そのまま密林のような奈落が足元に広がる。これは文字や写真ではきっと伝わらない。いくつになっても、どれだけ偉くなっても、むしろそうした失うものが多いほうが、きっと怖く感じる。
肩書きも経済力もそのはしごの前には無力。ひとりの人として、失うものを目の前にさしだしてその天秤を見せ付けられる。やはり大人だからこそ怖い。
ましてやツリーハウスのどこにも、「足を滑らせると、危険です」なんて注意書きもない。というかあれは誰に向けたメッセージなのだろう。子供ははじめからそんな怖さなんてないから、子供らしいのだ。なんて、じんわり汗ににじむ手ではしごをつかみながら走馬灯のようにいろいろなことを考える。
緊張を全身で表現しながら、登頂。
景色を楽しむ余裕も普段の50%減だけど、それでもここまでこれてよかったと、これまた50%減で喜びをかみ締める。
なぜなら、降りるときがもっと怖いから(笑)