サエない日々を送っていた少年がバンドを組み、ストリートや海辺でミュージック・ビデオのゲリラ撮影を重ねるうちに 、年上の女性との切ない恋と、それぞれが家庭に問題を抱えたメンバーたちとの胸を打つ友情が加速していく。 作詞の才能に目覚め、傷つきながらも成長していく姿が愛しくも眩しいコナーには、アイルランド全土で半年かけた数千人のオーディションから選ばれた、 フェルディア・ウォルシュ=ピーロ。演技はこれが初めてだが、7歳からソプラノのソリストとしてステージに立っていた美声で魅了する
情報源: 映画『シング・ストリート 未来へのうた』公式サイト
最初に言っておくと、本当おすすめ。
よく、刑事モノの熱いドラマを観た後に、没入しすぎて思わず町内を全速力で走しりだしたくなる作品があるけど、この映画も同じく、ギターをもって、真夜中の公園で引き語りしながら「うぉー」とか叫んで通報される類の映画。
ロックは冷笑される覚悟をもつこと
アイルランドの閉塞した雰囲気と、家族の不和。そんな鬱屈しそうな生活を音楽で抜け出そうとする高校性の主人公。
日本の映画でいえば、サイタマノラッパー的なストーリー。
でも、大きく違うのは、ヒップホップではなく、80年代のロンドンのロックやニューウェーブ。まさにミュージックビデオが新しいとされてた時代。
個人的にも一番好きな音楽のジャンルと時代で、自分の青春時代とも完全にシンクロしているので、流れてくる音楽から、この主人公が歌う音楽のすべてがど真ん中。
やっぱり、青春時代の音楽熱って、モテたいか、親や教師といった社会に対する反抗から来るのは王道。やり場のない気持ちを抑えきれず、音楽にぶつける映画って、ストーリーはシンプルなんだけど、一度そうした経験を持った人は、誰しも共感するんじゃないかな。
中でも一番のお気に入りのセリフは、主人公がデュランデュランのコピーバンドを作ったときに、主人公のお兄さんが言った言葉
「うまくやろうと思うな。それがロックだ。
「必死で練習しろ。カバーはよせ。」
「ロックは覚悟をもて。冷笑されると。」
本当にいい兄貴。ムネアツ。
この言葉をきっかけに、オリジナルの曲を作りははじめ、詩を書くことで、世界の見方を獲得し、自己効力感を育てながら成長していく。
その成長のプロセスがなんとも清々しく、自分の中に熟成しすぎて腐りかけてた熱い思いに火をつけて沸点を取り戻してくれたような、高揚感溢れる映画でした。
クリエイティブは自家発電力
昔から思うことで、クリエイティブの最大の能力は自家発電力で、自らの表現や創造性を自分のエネルギーに変えられるのが創造(クリエイティブ)の力だと。
例えば、料理がクリエイティブなのは、美味しいものを創る喜びは、そのまま食べたり食べてもらうことでエネルギーに変わる喜びとなり、次の創作に循環しているから。
音楽なら、恋することも、失恋することも。悲しみも喜びもすべてを自分の作品や表現に消化して昇華することで、エネルギーに変えられること。
この映画の主人公が音楽を通じて強くなっていくプロセスにある、そんな創造性のマジックや仲間たちとの絆に胸が熱くなります。
自己効力感はどこからくるんだろう?
とはいえ、外国の青春映画に描かれる登場人物たちには、なぜ?ナチュラルな自己効力感があらかじめ備わっているのか?
そこが、日本人のメンタリティとは大きくかけ離れていて、果たしてフィクションなのか、民族性や宗教観の違いなのか?
こうした映画を観ると、ストーリーよりも、そのことがいつも気になってしまう。
この手の映画に感動してしまうのは。結局、周りの空気に流されず、でもそれを自然体に流れを受け入れながら、屈折せずに自分の表現や考えを貫ける彼らたちのメンタリティの部分なのかもしれない。
とはいえ、おすすめです。