友人の年齢がとまってから13年。
「港に浮かべたボートを漕ぐように、人は後ろ向きに未来へ入っていく」
「我々は未来に後戻りして進んで行く」
フランスの詩人 ポール・ヴァレリー『精神の政治学』より
僕らは過去の風景を眺めながら、今を生きて、そして未来へと進んでいく。
先日、娘と近所の池のボートに乗った。
娘が漕ぐ思うように進まないボート。
湖面ではすべての景色がゆっくりと流れていく。
流される時間に身を委ねながら、子供と過ごすこんな時間も、もう2度とないことを思う。
それは、もう同じ過去は訪れないから。
ただそれだけの事実を、ぼんやり眺める。
そんなときに、多少の寂しさと小さなしあわせを感じる。
今を生きながら、過ぎ去った過去との対話する瞬間。
この過去という風景を眺める時、そこにはいつも穏やかな時間が流れている。
今日も友人と会話した。
別になんのたわいもない話だ。
友人はいつも穏やかで示唆深い。
優しく、時に力強くアドバイスしてくれる。
彼に敬意を払うことは過去を肯定して未来に向かって生きること。
そうやって。なにかに導かれながら自ずと進んでいく。