[TED] サルマン・カーン「ビデオによる教育の再発明」から学ぶソーシャルメディア教育のあり方

彼が映像教材を作り始めたキッカケは、遠く離れたいとこのために、家庭教育用の復習ビデオをYouTubeにアップしたこと。

言葉も高揚感あって楽しそうですし、教え方やそのスタイルにとても共感しました。

「非常に身近な誰かのために」という思いからスタートするプロジェクトは、結果多くの人の心を響かせるとてもよい例ですね。 それが、いまや、カーンアカデミーとなって、2200本のビデオが公開され、100万人が利用するほどに。

はじめから多くの人のために何かを伝えよう、表現しようとすると萎縮してしまいますが、明確な対象をイメージしながら、「喜ばそう」「伝えよう」とするのはクリエイティブにおいても黄金則だと思います。

そして、その行為を勇気をもって公開すること。彼のアクションからは非常に多くのことを学べます。 横道にそれますが、以前、番組の取材で訪問した方で名古屋の吉兼さん(「おじさんとおばさんのビデオだより」)という方がいて、彼は病に倒れた奥さんのために、何かできることはないか?と一考し、パソコンとビデオを購入し勉強して、日常の出来事を編集して、奥さんに見せてあげようとはじめたそうです。 今は、奥さんと楽しみながら映像編集しているそうですが、その作品をホームページで公開しています。楽しそうですよね。

■教育の場を人間的にする

さて、ヘッジファンドのアナリストだった彼がプライベートでやっていた教材ビデオがやがて多くの人に役立つことを知り、後半はこうした学習方法を学校教育の現場に導入しはじめた話に変わります。

好きなときに一時停止したり繰り返し再生できるマイペース学習のメリットは非常に高い効果を生むということ。そうした生徒の自分のペースを尊重する方法からはじまり、それぞれの学習の進捗をネットワークで把握することによって、先生や生徒同士が教えあう環境を作り出すこと。 一見テクノロジーを使うことは無機質で無表情な教育手法をイメージさせますが、従来のように電子教材を与えるだえけでなく、先生は生徒の学習ペースを把握しながら、そこに生徒同士や生徒と先生を結びつけ対話を活性化するファシリテーションに徹することで、より場を人間的でオーガニックな場にしようという試み。

この部分に彼の考える教育に対するヒントがあります。 「生徒あたりの先生の数」ではなくて、「生徒あたりの貴重で人間的な先生の時間」という指標。従来の講義のあり方では、そうした時間を費やすことは出来ませんでした。うまくテクノロジーを用いることによって、教室の対話の質や時間を変えることができます。

■ソーシャルメディア教育のあり方

ソーシャルメディア時代の教育のあり方は、ソーシャルメディアを使った教育というのではなく、今の時代の動画試聴スタイルや子供や人のコミュニケーションの方法、場合によってはゲーム業界や携帯業界など様々なメディアの変化から学び得ているものを、生かすことだと思います。

そうした人の欲求やニーズにあわせて、ソーシャルメディアが生まれたに過ぎないわけです。コミュニケーションや相互理解へ欲求、思いの源泉にヒントがあります。 それぞれの子供が学びたいと思ったときに、必要な引き出しを用意してあげること。

一元的に教えるのではなくて、それぞれのペースを尊重するやり方も、従来のテレビ的なスタイルから、観たい時に検索してみることができるYouTubeの試聴スタイルにも通じます。 そのために先生は生徒の知りたいことを引き出すファシリテーターであり、キュレーターであったり学習ソムリエであればいいのだと思います。生徒という視点ではなく一緒に学ぶという視点であれば、先生も有資格者じゃなくてもいいはずです。

ソーシャルメディアやITの手法論や手段にとらわれ過ぎることなく、なぜ、こうしたメディアが変化していきているのか?その「なぜ?」から学ぶこと。 教育の現場もIT教育のあり方も変化するときですし、本質的にITから何を学ぶのかを問い直すいいタイミングです。 TEDという存在もそうです。世界中の叡智を10分程度で学ぶことができる「ソーシャルメディアの学び舎」とも言えます。会社や学校でも、まずこの映像を観て、そしてそこから考えを引き出したり対話するだけでも、随分違ったコミュニケーションが生まれます。

映像をきっかけに、そこから自分の中にある伝えたいことを引き出してみる。こうした行為もソーシャルメディア時代的ともいえるでしょう。 きっと、ここにたどり着いた人も、ソーシャルメディアの存在に気づいている人だと思います。いま、教育やお互いに学び合う場のあり方が大きく変化しようとしています。 ITを学ぶための教育ではなくて、ITから学ぶ教育の場づくりを目指して、一人でも多くの人達と教育の現場を変えていければと思います。

また、カーンのように「伝えたい想い」を持ったすべての人が先生になれる時代。その形は様々ですし、従来の権威とも違ったものだと思います。まずは、それぞれが自分のフィールドで身の丈に積極的に表現し発信する力を身につけること。 これが、IT教育においても大切なカリキュラムだと思います。世代を越えて教えあう新しい教育の場が生まれること。

そうした場によって、社会やコミュニティが大きく変化し良い方向に流れだすはずです。 まずは、子供や孫のための学習ビデオづくりとかやってみては?はじめからうまくいかなくてもいいです! そんな、日本の新しい学び舎創りを一緒にしていきましょう!

サルマン・カーン「ビデオによる教育の再発明」 | Video on TED.com.