レイチェル・ボツマン: 現代人に広がる新しい「信頼」とは?

ITの世界では、「信頼」は特に重要キーワードです。では、「信頼」とはなんでしょうか?

そして、信頼を得ることは、私たちの生活にとってどれほど重要なものでしょうか?

レイチェル・ボツマンのお話は、とてもわかりやすく、示唆的に、この問いを投げかけてくれます。

信頼とは、「未知のものとの間に築く 安心できる関係」

信頼の定義を彼女はそう示しています。

「未知のものとの間に築く 安心できる関係」

このような見方で「信頼」を捉えると、なぜ信頼には唯一無二の性質があるのかが分かってきます。人に先が見えない状況を切り抜け、赤の他人に信頼を置き、前に進み続ける力を与える性質です。

引用元:レイチェル・ボツマン: 機関よりも赤の他人 — 現代人に広がる新しい「信頼」とは | TED Talk Subtitles and Transcript | TED.com

とてもわかりやすいですね。

僕の授業ではUBERやAirbnbを引き合いにだして、「知らない人を車の助手席や部屋の一室に招き入れてお金を受け取れますか?」という質問をします。

大抵は直感的に無理と答える人が多く、IT関係の人や好奇心旺盛な人以外は(出会ったことのない)知らない人を信用するか? という問いには懐疑的な傾向があるように思います。

ただ、むやみに人を信頼しましょう。という話ではなく、知らない人を信頼するためには何を基準にするか?また、知らない人から信頼されるためには、なにが必要か?という問いを引き出すための質問です。

そして、レイチェル・ボツマンの言うように「未知なるものと、安心のある関係」を積極的に築くことができたら、私たちの暮らしや働き方は大きく変わるはずです。

この「問い」こそが、ソーシャルメディアを活用し、理解する上でとても重要なことなのです。

多くの人から「いいね!」をもらったり、露出を高めることで権威を得るのではなく、信頼し共感しあう関係づくりを学ぶために、なにが必要か? 「信頼」の意味を学び直すことに、ソーシャルメディアの意義があります。

社会における信頼の流れが 変わりつつある

たとえば、シェアリングエコノミーギグエコノミーといった、初めて出会った人同士で対価を交換するような働き方の場合はこの「問い」を自分なりに消化しないと、先に進めません。

では、どうやって「知らない人を信頼するのか?

この問いを考えるにあたって、まず信頼のありかについて考えてみましょう。

レイチェル・ボツマンは、「信頼」のあり方がどのように変化してきたか?19世紀中頃まで、19世紀中頃〜20世紀、21世紀(現在)と3つのステップで説明しています。

ここでは、お金の貸し借りをイメージしてみるとわかりやすいと思います。

  1. 19世紀 LOCAL 地域や顔の知っている身近な関係
  2. 20世紀 INSTITUTIONAL 銀行や信託といった第三者機関
  3. 21世紀 DISTRIBUTED 第三者の関与しない、分散した個人同士の関係

ソーシャルメディアやソーシャルというキーワードを理解していく上でもっと重要なのは三番目の「(中央集権的ではない)分散型の信頼関係」という考えかたです。

そして、ここ数年の潮流でもある、ビットコインに代表されるブロックチェーンなどの技術革新においても、その考え方はより重要になってきます。

わかりやすく言えば、これまでは、信頼できる(だろう)第三者機関としての企業や団体が(たとえば、どの企業に勤めているか?どの大学を卒業したか?どの色のクレジットカードをもっているか? などによって)個人の信頼性を担保していたわけです。

もし、こうした機関を経由せず個人同士がお金の貸し借りをすれば、手数料もかからず、より最適に経済が動くのですが、個人同士ではリスクが大きいため、お金を持っている人は銀行などに預け、持っていない人は銀行から借りるわけです。

概念的に言えば、お金は「信用」に集まるので、より収入を得るためには、肩書きや属する場所といった権威を借りる必要があったとも言えます。

しかし、ソーシャルメディアの登場により、個人が実名で情報発信し、お互いが評価しあい人間関係(誰の知り合いか?)によって信頼を担保しあうようになり、そうした属性や資格といった過去のプロフィールよりも、現在進行形の生き様や、人間関係やそのコミュニケーションが可視化されそれを垣間見ることによって、(知らない)個人の信頼性をベンチマークできる時代になったわけです。

(横道にそれますが、もともと個人の信用を担保する機関の存在しない、発展途上国などの、いわゆるインフォーマルセクターの場合は、互いの信用をどのように担保し経済活動をしているのか? そこにも興味深い取引が行われています。また機会あれば書いてみたいと思います。)

ブロックチェーンによる信頼性の担保

2010年を元年とするソーシャルメディア(主にフェイスブック)の登場によって、権威や第三者機関の評価に頼らない「信頼」を獲得するために、実名で情報発信し、その友人関係を公開するというリスクをトレードオフしてきたわけです。

そのために、ソーシャルメディア上で何を発信するのか?また多くの人がソーシャルメディアに夢中になった理由などを授業ではディスカッションしてきました。

(例えば、実際に知り合いじゃない人をフェイスブックの友達リストに入れない理由など。)

これが、ソーシャルメディアを理解する重要なポイントでした。

1995年の(商業メディアとしての)インターネットの登場以降、一貫して変わらない原理原則として(脱中央的<分散型>ネットワーク)中央の存在しないフラットなネットワークという考え方を進化させ補完してきたのだと思います。

ソーシャルメディアの登場によって、権威のない個人であっても、ある意味で正当に評価されれる時代になってきたわけです。(まだまだ未完成ですが)

そして、新たな潮流として、ブロックチェーンという技術が登場し、技術的に(中央が存在しない分散型の関係)によって、銀行などを介さずお金を、個人同士が送金しあう仕組みがでてきました。

これもまた、信頼性を新たな形で担保する仕組みであり、ソーシャルメディアのコミュニケーションや互いの評価による信頼性の担保だけでは保管できない面を補って、より具体的に新たな働き方や経済の仕組みを見出す可能性が秘められているのです。

インターネットは誰のもの?

インターネットは個人のもの。

これまで属することでしか実現できなかったことが、個人の身の丈の信念や生き方で、自分に嘘をつくことなく、また周りに媚びたり、虚勢をはることなく、生き生きと働き、暮らすことができる社会の実現。

僕がインターネットに出会ってから一貫して変わらない想いです。

その中心になる考え方が、お互いが共助しあうための「信頼のあり方」をどのように変えていくか?でした。

インターネットの登場とその技術革新によって、具体的に「信頼」のあり方が変わってきて、そして、その兆しや変化を受け止めながら、新しい時代の「生き方」を僕らはアップデートしていく必要があると思います。

僕ら自身もネットから学び、現実の生き方や人間関係のあり方を捉え直す必要があります。

いい大学に行き、いい会社に就職すると得られた信頼から、違うものに変化してきたのなら、学び方や学びの場もアップデートされないといけません。

なおさら、社会の価値観やルールではなく、本当に人としてワクワクし好きなことで、周りに貢献すべきですし、それを仕事にしていく時代。

10年後、20年後の新しい時代。企業や国家が個人を守ってくれない時代がくると思います。

個人がお互いに自立し共助しあう社会に向けて、いまから準備するためにも、ソーシャルメディアは予行練習としての教材として存在するのだと思います。

あらためて、もし時代がそうなるとしたら、今からなにを始めるか?考え直し準備をはじめるにはよいタイミングかもしれません。

その意味でも、ぜひ、このスピーチご覧ください。