自分の夢はあたためすぎる前にはじめよう!プロトタイピングのおはなし。

150706-0003

今週は女性向けの創業支援ワークショップ「しごとデザインlab」(中小企業振興公社)

全4回シリーズの第3回目です。

今回は「プロトタイピング」を学びます。

最近の起業セミナーでは、事業計画書の書き方や財務や法務といった実務面ではなく、事業のアイデアが本当にニーズがあるのか?に焦点を当てた「リーン」という考えが普及しています。

リーンスタートアップは主に、ITやソフトウェア関連の起業事案に使われた考え方ですが、ITに限らず、自分のスキルやアイデアを生かした起業や新規事業開発にも有効です。

「リーン」は、新しい事業を始める際、「がんばって作ったけど全く売れない」という事態を避けるためのもので、いいかえれば、完成する前に、顧客を前に実験を繰り返しながら、その製品やサービスに対する「顧客のニーズ」を捕まえることを目的とします。

その「顧客ニーズ」をさぐるために、なるべくコストをかけずに小さく始められる製品やサービスの試作(プロトタイプ)を用いて検証していきます。

最終製品を作る前の、試作段階。アイデアをカタチにして検証することをプロトタイピングと呼びます。

ポップコーンを売ってみる。

たとえば、原宿でポップコーン屋を創業するとします。いきなりお店を構えるにはリスクが大きいです。

popcorn shop photo

Photo by puroticorico

いくら自慢のポップコーンが美味しくても、顧客のニーズとあわなければ、商品は売れません。

そのために、まずお店を作る前にできることで、顧客のニーズをさぐります。

そこでプロトタイピングなのですが、慌てて、試しにつくったポップコーンを町内会で配って反応をみるだけでは検証になりません。なぜなら、検証には「仮説」が大切だからです。

プロトタイピングのために仮説を立てる。

顧客のニーズに関する仮説を立てるためには、まず顧客や競合の観察を行います。実際にお店に出向いていって、どんな風に顧客が買っているか?や、実際に買ってみたり、買った人に聞いてみるのもいいでしょう。

観察を繰り返してみると、売れているお店もそうでないお店もポップコーンの味にはそれほど大差ない気がします。顧客は味で選んでいるのでしょうか?

どうやら、原宿で行列のできているお店は、その味ではなく、「原宿に来て、話題のお店に並んでいる」という感覚や体験を楽しんでいるようです。

インターネットで検索(これも顧客観察)をすると、普通のポップコーンを食べてもそれを発信する人は少ないのですが、有名なポップコーン屋さんの前で商品を前にセルフィーしている人が多くみあたります。

ここで仮説を立てます。「顧客は味で選んでいない」

とすれば、原宿にお店を出す。という前提では、町内会で、味やバリエーションを研究したポップコーンをふるまったとしても、有効な「プロトタイピング」になりませんね。

顧客の課題にフォーカスをあてる

もうひとつ大切なことがあります。この仮説には、どんな「顧客の課題」が含まれているか?を考えることです。

thinking photo

Photo by @boetter

顧客の課題とは「ポップコーンを買いたい」「話題のお店に行きたい」という欲求の裏にある、「なにかの課題を解決したい」という無意識の欲求をさします。

話題のポップコーン屋さんの行列に並んでいる人は「話題のポップコーンを食べたい」という欲求の裏に「原宿にわざわざ来たのだから、それを自慢できる何かがしたい」という課題を抱えている。とも言えます。

その課題を解決する存在として、ポップコーン屋があった。と見るわけです。原宿界隈に住む人はきっと並んでまで買わないでしょう。

インタビューを繰り返していくと、その中にも「本物志向」のポップコーンを食べたい。という声や、まだ(友人がだれも入っていないような)有名になっていない、ポップコーン店を探したい。というニーズがあるかもしれません。

もし、そうであれば、自慢のポップコーンを作って売るのではなく、欧米で流行している。もしくは、ブレイクする前のお店を見つけてきて、そうした「顧客ニーズ」を探るために、狙を定めた場所やイベントでテスト販売をしてみたり、メディアに配信して、取材がどれくらい飛びつくか?をテストマーケティングします。

場合によっては、ポップコーンではなく、サンドイッチでもいいかもしれません。事業ゴールが「原宿で人気のあるお店を経営したい」であれば、製品を変えてもいいわけです。

こうして、実際に出店する前に、プロトタイピングをしながら、顧客や世間の話題をベンチマークにして、仮説検証を行っていきます。(ひとつ問題があるとすれば、周知しながら検証を行うために、情報が開示されなてしまう。いわゆる、「ステルスモード」になれない。という問題点はあります。)

実際の起業に当てはめてみる

今回のコースでは、そうした「ダイナミックな事業」ではなく、自分らしい、身の丈にあった起業を志す人たちが多く参加しています。

その場合でも、大切なことの本質は同じです。

自分の「やりたいこと」「できること」で夢を叶えようとすると、思わず「良いものを作れば売れる」と、自分のスキルやサービスばかりに意識が向いてしまい、顧客を見失いがちです。

自分の「やりたいこと」「できること」にニーズがあるのか?それを探るために、目の前の人に試すことができる、小さなアクションやプロトタイピングを繰り返すことで、「もとめられること」とフィットするか?を検証する時間が必要です。

その「もとめられるもの」がなにか?には、必ず「顧客の課題」が潜んでいること。なにかの悩みや課題を抱えている(もとめている)人に、提供できる解決策(事業アイデア)=「やりたいこと」「できること」なのか?を考えることです。

イベントチラシを作る

まず、顧客の反応をはかる場づくりをすることが大切です。一番簡単なのは、ブログを作ったり、フェイスブックなどで、実際のアイデアを提示して反応をみる。ですが、ここでは「イベント」を開催してみましょう。

150706-0004

勉強会や相談会。販売会や体験会など、気軽に参加できるイベントを開催します。

このイベントでも、開催するにはリスクがあります。会場を抑えて開いても人が来ない。ということもありえるわけです。

そこで、そのまたプロトタイプとして「イベントチラシ」を作成します。

チラシの試作(プロトタイプ)をいくつかつくって、実際に行ってみたくなるか?もしくは、どんなものが必要か?をさぐります。

一枚のチラシに、顧客ニーズ(潜在的な顧客課題へのイメージ)が含まれているか?実際に、イベントで体験する際に、その検証ができるか?などをイメージしながら、デザインを作成していきます。

ワークショップでは実際にチラシのテンプレートをつかって、擬似的にチラシづくりに挑戦します。また、パワーポイントを活用したチラシづくりのコツなども解説していきます。[amazonjs asin=”4822250938″ locale=”JP” title=”リーン・スタートアップを駆使する企業”][amazonjs asin=”4873115914″ locale=”JP” title=”Running Lean ―実践リーンスタートアップ (THE LEAN SERIES)”]

Shareこの記事をシェアしよう!