主人公の彼が人の生き死にを目の当たりにしても、なお山に「こだわる」理由がどこにあるのか? 読み進めながら気にしていたのですが、彼が山に魅せられたり、思いを残す出来事に遭遇した経験のどれかが、その直接の理由ではなく、「ただ好きだから」という漠然とした答えに突き動かされているのが、彼の強さや大きさを感じさせているのだと思います。
山との出会いにあった様々な体験のどれもが答えであって、そのどれかが理由ではないということ。その理由にすらこだわっていないところ。
主人公の強さの源は、「好き」という信念に揺るぎないものをもち、それ以上の理由に「こだわらない」ところにあるのでしょうね。
まさに「山」のような、自然体でおおらかな存在感。
もし彼が遭難者救助を行う、何かしらの明確な理由があって、そこに「こだわっている」のだとしたら、それは「強さ」ではなくて「弱さ」になってしまうような気がします。
うむ。「こだわっている」うちは、まだまだなんだろうなぁ。
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