プラ・バロック (単行本)
第12回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作ー全選考委員絶賛!という見出しと「仮想世界」を入り口にしたミステリーということで、いろいろ期待しながら読み進めました。
いわゆるセカンドライフのような仮想空間を舞台にした殺人事件だとしたら、そうした仮想世界体験をしたことのない読み手にどれだけのことが伝わるのか? もしくは、ただ安直に「バーチャルな世界は怖い」という、仮想世界に没入してしまった人の心の負や闇の部分だけを切り取られた作品なのだろうか?そんなあたりも、この小説の踏み込み度合いに期待しながら読了。
前半は若干読みづらさを感じますが、後半いっきに加速します。
それほど深い没入感で仮想世界を描いた作品ではなく、コミュニケーションのインターフェイスとしてさらっと仮想空間を扱ったあたり、今の時代ならこれくらいがちょうどよいバランスな気もしました。
人物の描写や動機がもう少し描かれているとさらに面白い気もしましたが、いい意味、仮想世界云々という舞台設定よりも、全体的なミステリーとして謎解き感やストーリーの緊張感はあるので、読み味はよかったです。
主人公の女性刑事役がどこか漫画のルサンチマンに登場してくる人物にも通じるところもあり、彼女を介した続編が出てきても面白そう。
その前に、こうしたテーマがもう少し受け入れられるようになるまでに、数年はかかるかもしれませんね。
続編含めて、こうした小説に期待!