泣けない戦争映画。いい意味で。
ありがちな感傷的なシーンにあえて泣けるような演出がなく、それがより映画としての味わいをかもし出している。
二宮君演じる西郷の役どころも、戦争をしらない現在の若者がいきなり戦地にタイムスリップさせられたような素直な演技で好感。「やってらんねー」って言葉がまたすごくよかった。
現代を生きる僕らは、極限のときにそんな言葉を吐く余裕すらあるだろうか・・・なんて考えながら彼の目線に移入しつつ観てたけど、そうやって憂い嘆きながらも、たくましく生きようとする彼の姿にどこか心強さすら感じてしまっていた。
戦争という記憶がどんどん薄らいでいくこの時代に、改めて映画を観て、その時代背景がまだ60数年前にあった現実だと思うと、その史実がぎりぎり残っている時代に僕らが受け継ぐべきものがあるのではないかと考えさせられる。
あのころの「やってられねー」現実に比べれば、やってやれることは沢山ある。
理屈を超えて 「戦争は絶対にあってはならない」
そう一言宣言することだって、小さな伝承なのだと信じたい。
史実への忠実さはともかくも、映画もその意味では伝承のひとつ。
涙腺をくすぐられすぐ泣かされる映画が多いなか、悲しいのに泣けない映画というのも、たまにはお勧め。