自分ごとの政治学。死者の声を聞く。

この本はサラッと読めて要旨が明瞭。わかりやすいです。
政治学者であり、親鸞研究や、ヒンディー語研究者の中島岳志さん。
彼の政治観がよく現れているのが最終章「死者と日常の政治学」

立憲主義と民主主義

これは、立憲主義と民主主義は緊張関係<立憲主義(憲法によって決められているもの)は民主主義(過半数)がそれを否定しても簡単には変えられない>にあって、

立憲主義は「死者」=人類の歴史の中で、様々な過ちや試行錯誤の末、生き残ってきた過去の礎により紡いできた「ルール」であり、
民主主義は「今生きている」人の意見。という考え方。

つまり、歴史(死者)によって築かれてきたものを軽視し、生きているもののみで、物事を決定しようとするのは「驕り」であり、死者によって制約された立憲主義、立憲民主主義でなくてはならない。というスタンス。
なるほど。

死者を思う。

僕も若くして亡くなった数少ない友人と時折、対話して、彼ならこんな時どんなふうに考えるだろう。と思うことあります。
そういうタイミングって決して悪い方には行かないというか、記憶を美化している点も含めて、死者を思うと同時に未来志向になるのが不思議です。

輪廻転生や、死後の世界、天国地獄というのは信じるタイプではないのですが、確かに、自然と乖離した生活と同じく、日常に「死を思う」生活をしていないと、どこかで糸が切れた凧のように、思考がふわっとしてしまい、やるべきことを見失う気がします。

混迷の時代だからこそ

バイオミミクリーという生物から模倣し工学に応用する分野がありますが、地球誕生から生き延びてきた生体には「知恵」がある。という考え方にも通じます。

新しいことが次々と誕生するように見えて、実はどんな転換点も「リセット」ということはなく、過去から受け継いできた大きな流れから学び、適応しているだけなんだと思います。

今一度、死者を思うことと、自分自身がこの世からいなくなった時に、思いを未来に託せるように、生ききらねばと思いました。

論旨や軸がしっかりしている人の考えを読むと、色々整理されてスッキリします。

この本紹介しておきながら、中島岳志さん「思いがけず利他」は激しくおすすめ。

NHK出版 学びのきほん 自分ごとの政治学 (教養・文化シリーズ NHK出版学びのきほん)

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