[読了]私は魔境に生きた―終戦も知らずニューギニアの山奥で原始生活十年

あまりにも読み終えるのが惜しかった!毎晩、密林に住む日本兵に会うのが楽しみだったこの本。

生活でくじけそうなときも、彼らは今日を生き抜くために必死に密林をさまよっている。

希望を失うことなく、お互いを励ましあいながら。そんな彼らに会うと、このクーラーで快適な文明社会を生きて、不平をたれている自分がおくがましくなる。

とはいえ、説教的でもなく、がむしゃらに生きている彼らにどこか微笑ましさすら感じてしまう。とてもテンポよく読みやい内容でした。

リアリティとバイタリティに圧倒される

レビューに「下手な小説が読めなくなる」とあったけど、まさに衝撃的な密林での10年間を追体験してしまうと、そのリアリティと生きるバイタリティに圧倒され、この最悪で壮絶な環境下を、前向きに生き抜く彼らの姿に触れるだけで読めば読むほど不思議と元気になります。

forest jungle photo

Photo by Accretion Disc

最初は敵兵を逃れ、密林で籠城生活を決意する17名。のち最初の数年の間に4名となり、この4名で密林を生き抜くことに。
敵兵の発見を逃れるために、あえて方向感覚を失うような土地を選び、声をひそめながらも、土地を開拓し、やがて農園を開くようになる。

生きるために必要なこととは

生きるために必要なことは、何をおいても食べること。

そして、現在のように情報もない時代、かすかな記憶を頼りに、開墾し、家をたて、狩り、そして調理をし、そして度々襲いかかるマラリアや病気、怪我にも薬もないなか自然の治癒力だけを頼りに生き抜いた4人。

過酷な内容かと思いきや、この4人の生存能力にある、「生きよう」とする前向きさが、時折コミカルにも思え、読み進めるたびに、どこか笑えてしまうような気持ちも含め、読んでいる自分が元気になっていくのがわかる。

こんな感覚になる本は初めてだと思う。

人は覚悟を決めると強い

戦場は、ある種の「死にゆく覚悟」を植えつけられ、妄動して自分を見失ってしまう場所。

でも、彼らは、同じ場所で「生きる覚悟」を選んだ。

しかし一度死期を失った私たちに生への執着は強かった。日本軍人として虜囚の恥は受けられぬ。潔く自決すべきか。しかしそれも弾丸雨飛の緊迫した状況の下では容易なのだが、平静な今、私たちは軍人のベールを捨てた人間そのものの弱さをつくづくと感ぜられた。何としても生きたい。生き抜かなければいけない。(本書文中より)

そして、その覚悟を10年に渡って全うし、詳細に記録を残したことを考えると、この手記自体、もっと多くの人に読まれる、貴重な記録ではないだろうか。

戦時中の過酷な話以上に、当時の人の「生き抜く知恵」というものを伝承していくことも大切だと思う。

敵兵の目を逃れ、限りある資源の中、農業や鍛冶、狩りなど、文明人として使わなくなったスキルを駆使して生き抜く知恵。ぜひドキュメンタリーの番組などで再現してほしい。

本当の意味での生きる力を知る

戦争ものが苦手な人でも、この本はとても読みやすく、一気に読み進められる内容なので、ぜひおすすめです。

Kindleでも安価に手に入るので、ぜひ。

もうご存命ではないと思うけど、この4人に会えることならば、実際にあって話を聞いてみたい。そんな気にさせられる勇気をもらえる内容でした。

私たちには今、どんな些細なものでも、どんなつまらないものでも、金で買い、またほかから求めることはできない。すべて私たち四人の手で考え、働いて作り出さなくてはならない。そこには打算も何もない。ただ一つの新しい物を生み出すことに無上の喜びを感じているのだった。また一面、働くことは日常の憂いを忘れさせてくれるにも役立つ。比較的農園作業も落ちつき、ある程度の暇ができて家でごろごろしていると、とかく要らぬことを考えて憂鬱になるばかりだ。こんな時、何かの仕事に熱中していれば、何を考える余裕もなく、すべてを忘れ、仕事に熱中している時が、私たちの一番幸福な時間なのである。(本書文中より)