社会の息苦しさに一石を投じる子供達 – 映画 鈴木先生 

平成版金八先生というのか、とても今風な教育フィクションが面白くてドラマは3度ほど見たのですが、その劇場版。

ドラマで人物のディテールは描けてしまったので、劇場版はイシューに焦点を当ててるようで、今回もまたいいところを狙って「問い」を投げかけて来ます。

このドラマの面白いところは、学校の中に起きる問題に直面した時に、「さぁどうする?」と思考をフル回転させて、鈴木先生の差配や、成長していく子供達の思考力を味わっていくことで、これまで学校にありがちな教師や大人のロジックでねじ伏せない、共に考える場面を追体験する面白さにあります。

武富健治原作の漫画を基に、普通の教師が真摯(しんし)に教育問題に取り組む姿を描いたテレビドラマの劇場版。黒縁メガネとループタイ姿が定番の教師が、立てこもり事件の人質にされた女子生徒を助けようと奔走する姿を追い掛ける。ドラマ同様主演を務めるのはテレビドラマ「家政婦のミタ」で注目を浴びた長谷川博己。妻に臼田あさ美、同僚に田畑智子らがふんしている。最悪の事件を前に尽力する鈴木先生のパワーに圧倒される。

情報源: 解説・あらすじ – 映画 鈴木先生 – 作品 – Yahoo!映画

声の大きさに封殺されてしまう息苦しさ

今回は、「生徒会役員選挙」の話。

有効投票率を上げるために、記名性を導入するかどうか?という議論から、そうした全体主義的な同調圧力に対する子供達の素直な抵抗と、社会に蔓延している生真面目さゆえの息苦しい空気をシンクロさせて来ます。

現代版金八先生だよなぁといつも感心してしまうのは、その時代のムードや課題をうまくストーリーに組み込んでいること。
そして、昭和時代のように情緒的に熱血で解決するのではなく、その問題をそれぞれに考える場を教師が作ることで、子供達の成長を促すように寄り添うスタイルの方法論も、とても今風。

映画を見ている大人たちにとっても「考えるべき問題」を中学校という舞台におきかえて表現しているので、誰が見ても楽しめます。

今回のテーマを深読みすると、まさにトランプ次期大統領誕生の話や英国のEU離脱のブレグジットに通じる話で、post-truth化(大衆が事実よりも感情を優先にしてしまう)にも繋がる話。

投票を記名性にして、有効投票率を上げると、ポピュラリティある人に傾き、冷静な選択がされなくなるのではないか?という生徒たちの洞察と、そうならば、選択を棄権する権利やグレーゾーンも残して欲しい。という意見。

声の大きな人に意見や関心が集中してしまい、少ない声が封殺され、真面目な人が損をするシステムになっているならば、せめて避難する場所、逃避や棄権する権利も認めて欲しい。と主張する。

まさに今の全体性に感情で流されがちなpost-truth化に対して、足を止めて何かを必死に考えようとしている中学生たちが、映画とはいえとても印象的でした。

エピソードに公園の喫煙所撤廃の話も盛り込まれてますが、まさに、禁煙運動のマジョリティによって、社会が浄化されていくようい見える一方で、小さな意見には耳を傾けなくなり、そしてそれが自分に跳ね返って、全体的に息苦しい社会になってしまう空気感。

そうした社会の流れにどんな方法で意見を伝えるのか?鈴木先生の教育メソッドがじわじわ効いてきて、子供達の自立性や一段高まってたくましくなっているのが楽しめる内容でした。
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