地域をつくる小さなきざし

今回は鹿児島に始まって、宮崎、熊本、長崎、佐賀、福岡とダーツの旅のようにまわって、土地土地の人と交流してきました。

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昨年より、起業・自立支援のワークショップで九州に出向かせていただいているのですが、同時に地域のもつ課題や現状を視察しながら、マルチハビテーション(多地域居住)の可能性を模索しています。

地域や、人との出会いを通じて、都市生活者と地方の交流や居住のあり方を見出しながら、自分自身もどのように関われるのか? と言う視点でフィールドワークしてきました。

無個性化する地域や商圏

どの地域にも共通しますが、過疎化したシャッター商店街やロードサイドの巨大モール。駅前の大規模再開発。
どのエリアも活気や勝ち負けに関係なく「無個性化」しているのが見て取れます。

自然や文化的なものをのぞいて、地域の魅力を感じるところが少なくて、大規模な開発と言う名のもとに衰退している感すらあります。また再訪したいなぁと思える「なにか」が足りないんですね。

今回の取材を通じて、一番の収穫は、取材目的ではなく飛び込みではいった美容室のオーナーとの会話。少し辺鄙な場所にある小さなカフェのオーナーとの立ち話。地域の産品を元に開発した地産の地酒を作っている洋菓子屋さんの店主のお話でした。

フィールドワークの神様はこんなわかりづらい場所で僕が来るのを待っていてくれているのか。。。と。無欲な瞬間のほうが、ヒントが多い。そんな連続でした。

小さな兆し「路地裏の小さなカフェ」

小さなカフェ、洋菓子屋さん、美容室のオーナー。独立自営している人たちの話しは、そこで生きる覚悟と工夫があります。そして、それが結果地域の個性や経済に寄与しています。

当たり前のことですが、街の顔というのは、「人」なんですよね。

そして、もっともその土地を印象づけるのは、自営の小さなサービス業や製造小売業を行っている人。

僕のようなよそ者にとって、その土地に再訪する可能性は、たった一人の人との縁だったりします。そして、そんな小さな縁が生まれやすい場所は、やはりそうした小商いなのだと思います。

メインストリートから離れた場所にひっそりとあるカフェ。

「その帽子どこで買ったんですか?」そんな、たわいもない小さな会話やタッチポイントが無数にある土地をデザインすること。

クライアントや人の会社を訪問するとき、思う以上に緊張します。待つ側にとってみると、何にも感じないものですが、人の場に入るというのは、居心地の悪さがあるもの。

ちょっとした会話がその緊張感をとくのと同時に、受け入れられた感じが土地の魅力にすり替わるので不思議です。歓迎するのではなく、普通に会話できるタッチポイントが生まれやすくすること。一見デザインできなそうなディテールですが、まだまだ工夫はできそうです。

小さな兆し「洋菓子屋さんの可能性」

地元の栗を使ってプロデュースした焼酎づくりについてお伺いしたのですが、街の菓子屋さんのような製造小売業は、地域の資源をよく知っていて、そして、その素材の付加価値を高めて提供するということを、事業を通じてずっとやって来ている人たちなんですね。

地域の為に。というよりは、自らの事業を持続可能にするために、素材にこだわったり、生産者さんとの信頼関係を築いて来たり、商品のニーズを把握したり、デザインやパッケージにこだわったりと、綿々と続けて来た作業が時として、地域の新たな付加価値を見出すきっかけになる。

そして、そのプロデュース能力が他の小売業の人に伝承されることで、地域内に変化を与えて行く。

そんな現在進行形の事例に触れて、とても勉強になりました。

その方法論を継承した薬局の若手店主が、オリジナル石鹸を販売したりと、小さな第一歩ですが、その街や商店街から生まれ始めていました。

小さなものづくり。大型のショッピングセンターからは決して生まれない萌芽。

急激になニーズ拡大ではなく、生産体制や品質を保ちながら、成長させていくように広げていくところに、ソーシャルメディアを活用したプロモーションやコミュニケーションの方法などは、役に立つ気がします。

小さな兆し「美容室のオーナーがつくるフリーペーパー」

フィールドワークの最終日。翌日の東京でのプレゼンに備えて、伸びた髪を身ぎれいにしようと、Google mapで検索して飛び込みではいった美容室。ひょんな雑談からオーナーが、自分で作った商店街のフリーペーパーをプレゼントしてくれました。

しかも、こんな取材をしているなんてことも何も告げずに、突然興味深い話しをしてくれたのでびっくり。

手作り感を残しつつも、掲載店舗は余白がないくらいびっしりと詰まっている。評判を聞きつけて他の商店街も真似をするけど続かないのでどうしたらいいのか? という相談が舞い込むほど、彼の手腕が光る媒体。そんなオーナーが、

「なぜ、商店街のフリーペーパーが3−4号以上続かない理由ってわかりますか?」

うむ。面白い。なんだろう。

その理由は、「みんなでつくるから」

合議制で誰も責任をとらないものづくりは破綻する。強いリーダーシップで誰かが責任もってプロデュースしないかぎりは、スピードもクオリティもあがらないという。

シンプルだけど、大事な話し。本当にそう思う。

武雄市図書館

この話しを聞きながら、思い出したのは、今回訪れた、武雄市のTSUTAYAの図書館や長崎の県立美術館など、強いリーダーや行政マン。建築家の存在が見え隠れする公共施設。

市民参画や地域恊働、公民連携の裏に、緻密な根回しや、一刀両断するリーダーシップ。小さなフリーペーパーも大規模の公共事業も、人にインパクトを与える持続的な事業は、同じなんでしょうね。

コミュニティ内で仲良くすることは大切。でも、実際はお互いが責任を譲り合うと結局対立しながら、なにも決まらずに衰退していく。

覚悟あるところ(人)にしか、残る道はなし。

小売店鋪でもサービス業でも、そこに店を構えて顧客のニーズと真剣向き合って続ける覚悟。

また、様々な反対を押し切って、哲学としての建築や公共施設を作ろうとする気概。

そうした腹のくくった人やモノ、場づくりが、その土地の個性を作っていくのだと思います。

覚悟からうまれるもの

農業にとって、よい土、風、水が必要な様に、その土地を育てる人、よそから来る者。そしてその双方を混ぜ合わせる人。そんな役割や、自律分散協調してコミュニティを超えてゆるやかに多地域で連携しあう場づくりが重要になってくると思います。

僕自身は典型的な都市生活者なので、そんな自分がアクセスできる場所やコミュニティづくりというのが目下のイメージです。なかなか都市生活者と地域には温度差がありますが、そこをどのようになじませられるか?

都市にも地方にも課題は山積ですが、双方を分離するのではなく、協調しあって競争ではなくワクワクしながら共創しあうコミュニティを生み出し方を模索したいと思います。

仕事のご縁というのもあるのですが、九州は様々なイシューやきざしがうまく凝縮していて、とてもフィールドワークがしやすい場所です。本当に沢山の気づきや学びを得た時間でした。今年は九州に拠点をつくりながら、もう少しフィールドワークを続けてみます。

なによりも、地方は人もいいし、食べものが美味しい。よい温泉がある。都市生活者の僕が求めているのは、そんな癒しなのかもしれないけど、移動する度に、日本はこんな小さな国土に素晴らしい資源が沢山眠っている。ちょっと移動するだけでも、豊かさを享受することができることに気づかされます。

情報化社会だけど、だからこそ、体を動かして、そこに身をおくことで、得られる体験や経験も稀少で価値が高いこと。

今年の夏はあっという間にすぎてしまったけど、本当によい出会いや体験や気づきに満ちた時間でした。突然の訪問に関わらず、快くお話を聞かせくれた多くの方々や、このフィールドワークをサポートしてくれたみなさんに本当に感謝でいっぱいです。